居抜き物件のトラブル7選| 契約前・引渡し時・退去時に起きる問題と回避チェックリスト
居抜き物件は初期投資を大幅に削減できる魅力的な選択肢ですが、「引き継いだ設備が故障していた」「造作譲渡の内容が契約書と違った」「退去時にスケルトン戻しを要求された」——といったトラブルが後を絶ちません。トラブルの大半は「契約前の確認不足」が原因です。本記事では、居抜き物件で起こりやすい7つのトラブルを「契約前」「引渡し時」「退去時」の3つのタイミングに分けて整理し、各トラブルの回避策と、契約前に確認すべき10項目のチェックリストを提供します。
1. 居抜き物件のトラブルが起きる3つのタイミング
| タイミング | トラブルの性質 | 主な原因 |
|---|---|---|
| 契約前 | 貸主の承諾、造作譲渡契約、設備の状態確認に関するトラブル | 貸主・前テナント・新テナントの3者間の認識のズレ、確認不足 |
| 引渡し時 | 設備の故障・欠品、リース品の混在に関するトラブル | 造作譲渡契約書の不備、引渡し前の動作確認の不足 |
| 退去時 | 原状回復の範囲、スケルトン戻しの費用に関するトラブル | 賃貸借契約書の原状回復条項の確認不足 |
2. 契約前のトラブル3選
トラブル①:貸主が居抜きでの引渡しを承諾していなかった
前テナントが貸主の承諾を得ないまま居抜きでの売却を進めており、契約直前になって貸主が「スケルトンに戻してからでなければ次のテナントには貸さない」と拒否するケースです。このトラブルが発生すると、居抜きの前提で進めていた資金計画がすべて崩壊します。
回避策
造作譲渡の話を進める前に、貸主が居抜きでの引渡しを承諾しているかを必ず確認してください。テナント仲介会社を通じて物件を紹介してもらう場合は、仲介会社が貸主への確認を事前に行うため、このトラブルを未然に防げます。
トラブル②:設備が老朽化しており、使用に耐えない状態だった
内見時には問題なさそうに見えた設備が、実際に営業を始めると故障が頻発するケースです。特に飲食店の場合、排水管の詰まり・油脂固着、エアコンの不調、冷蔵庫の冷却不良、給湯器の故障が多発します。営業開始直後に設備が壊れると、修理費用に加えて休業による売上損失も発生します。
回避策
内見時に全設備の動作確認を行い、記録を残してください。特に飲食店の居抜きでは、水を流して排水の状態を確認する、エアコンを実際に稼働させる、冷蔵庫・冷凍庫の温度を計測する、ガスコンロの着火を確認するなどの実地テストが必須です。前テナントに設備の使用年数とメンテナンス履歴を書面で提供してもらうのが理想です。
トラブル③:造作譲渡料が相場より著しく高い
前テナントが造作譲渡料を内装工事費(新品の取得価格)に近い金額で設定しており、中古品としての適正価格を大幅に上回るケースです。居抜きのメリットである「初期費用の削減」が、高額な造作譲渡料によって帳消しになってしまいます。
回避策
造作譲渡料の妥当性を、設備の残存価値(取得価格×残存耐用年数÷耐用年数)で計算して検証してください。テナント仲介会社に相場観を確認し、高すぎる場合は減額交渉を行うか、スケルトン物件での出店も選択肢に入れて比較検討してください。
3. 引渡し時のトラブル2選
トラブル④:造作譲渡契約書と実際の設備が一致しない
引渡し時に確認したところ、造作譲渡契約書に記載されていた設備が一部欠品していた、または契約書に記載のない不用品が残置されていたケースです。「テーブル×3」と記載されていたが実際は2つしかなかった、逆に前テナントが処分すべきゴミが大量に残されていた——といった問題が発生します。
回避策
造作譲渡契約書には、譲渡する設備・什器の一覧を「譲渡品リスト」として別紙で添付してください。各設備のメーカー名、品番、色、サイズ、個数、設置場所を記載し、写真を添付するのが理想です。引渡し当日は、リストと現物を1つずつ照合し、双方が立ち会いの上で確認します。
トラブル⑤:リース契約の設備が混在していた
前テナントが使っていた設備の中に、所有権が前テナントではなくリース会社にあるリース品が含まれており、引渡し後にリース会社から返却を求められるケースです。リース品は造作譲渡の対象にはなりません。リース品を知らずに使い続けると、リース料の請求が新テナントに来る可能性があります。
回避策
造作譲渡契約の締結前に、前テナントに対して「譲渡対象の設備の中にリース契約の設備が含まれていないか」を書面で確認してください。リース品がある場合は、前テナントにリース品の返却またはリース契約の解約を求め、造作譲渡の対象から除外します。
4. 退去時のトラブル2選
トラブル⑥:退去時にスケルトン戻しを要求された
居抜きで入居したにもかかわらず、退去時に貸主から「スケルトン状態に戻して返してください」と要求されるケースです。スケルトン戻しの工事費用は坪あたり5〜10万円が相場で、20坪の店舗であれば100万〜200万円の費用が発生します。居抜きで入居したことと、退去時の原状回復義務は別問題です。
回避策
賃貸借契約書の「原状回復」条項を契約前に必ず確認してください。原状回復の基準が「入居時の状態」なのか「スケルトン状態」なのかで、退去時の負担額が大きく変わります。居抜きで入居した場合でも、原状回復はスケルトン状態への復旧を求められるのが一般的です。退去時に居抜きで渡したい場合は、その旨を賃貸借契約書に特約として明記しておく必要があります。
トラブル⑦:前テナントの損傷まで原状回復を求められた
退去時に、自分が入居する前から存在していた傷や汚れの修復まで求められるケースです。居抜きで入居した場合、「どこまでが前テナントの損傷で、どこからが自分の損傷か」の区別が難しくなります。
回避策
入居時に物件の状態を写真・動画で記録し、日付入りで保存してください。壁や床の傷、設備の汚れ、天井のシミなど、既存の損傷を網羅的に記録しておくことで、退去時に「これは入居前からあった損傷です」と証明できます。貸主と一緒に入居時の状態確認を行い、記録を双方で共有しておくのが理想です。
5. トラブルを防ぐ「契約前チェックリスト」10項目
| # | チェック項目 | 確認先 |
|---|---|---|
| 1 | 貸主が居抜きでの引渡しを承諾しているか | 貸主または管理会社 |
| 2 | 前テナントの退去理由(営業不振か、移転か、個人的事情か) | 仲介会社または前テナント |
| 3 | 造作譲渡料の金額と内訳(設備ごとの内訳があるか) | 前テナント |
| 4 | 譲渡品リスト(メーカー、品番、個数、写真の添付があるか) | 前テナント |
| 5 | リース品の有無(譲渡対象にリース契約の設備が含まれていないか) | 前テナント |
| 6 | 全設備の動作確認(水道、排水、ガス、電気、エアコン、冷蔵庫等) | 内見時に自分で確認 |
| 7 | 設備の使用年数・メンテナンス履歴 | 前テナント |
| 8 | 賃貸借契約の原状回復条項(スケルトン戻しか、入居時状態への復旧か) | 賃貸借契約書 |
| 9 | 入居時の物件状態の記録(写真・動画を日付入りで保存) | 自分で記録 |
| 10 | 近隣トラブルの有無(前テナントと近隣住民の間にトラブルがなかったか) | 仲介会社または管理会社 |
💡 テナント仲介会社を通せば、チェックの大半を代行できる
上記10項目のチェックは、テナント仲介会社に物件探しを依頼すれば、仲介会社が代行または同行サポートしてくれます。特に①の貸主承諾の確認、②の退去理由の確認、③の造作譲渡料の相場チェック、⑩の近隣トラブルの確認は、仲介会社が情報を持っていることが多いです。クラスラ不動産は「テナントの窓口」フランチャイズとして、居抜き物件の状態チェックから契約交渉まで一貫サポートしています。
6. まとめ|居抜き物件は「安い」からこそ慎重に
居抜き物件は初期投資を削減できる大きなメリットがありますが、「安い」からこそ慎重に確認すべきポイントが多い物件形態です。トラブルの大半は契約前の確認不足が原因であり、本記事のチェックリスト10項目を1つずつ確認すれば、ほとんどのトラブルは未然に防ぐことができます。
居抜き物件の契約で失敗しないために最も重要なのは、物件の状態を客観的に評価できる第三者(テナント仲介会社)に同行してもらうことです。自分だけで判断すると、コストの安さに目を奪われて設備の問題や契約上のリスクを見落としがちです。